弁護士の北野隆志です。

 今回は代金回収・債権回収の戦術についてお話します。

 私は弁護士になる前は建設業界にいました。

 <経歴等についてはこちらをご参照ください>

 私の会社では主に鳶工事や土木の基礎工事、解体工事などを行っていました。

 ニッカポッカを着て現場で汗を流すこともありましたが、重要な仕事は工事代金の回収です。

 せっかく一生懸命働いたのに代金を支払ってもらえなければ、おおきなダメージになります。

 建設業時代は、あらゆる手段を検討し、あらゆる手段を講じて債権の回収を行っていました。

 債権の回収といっても、いろいろな段階があり、その段階に応じてできること、やるべきことが変わります。

 そして、それはどんな相手なのか、相手の経済状況、相手との関係、債権の種類、時効までの時間などさまざまな要素によって異なり。

 どっしりと構えて真正面から回収するのが良い場合もあれば、そうでない場合もあります。

 平常時と相手の危機時ともとるべき行動はかわります。

 私がかつていた建設業界では、相手の経営状態の危機時には危機を察知した瞬間にトラックに金属バットを放り込んで、相手の倉庫や資材置き場にいって早い者勝ちで価値のありそうなものを引き上げてくるといったことが普通でしたが、もちろん今はそんなことをすると逆に別の危険な目にあいます。あくまで安全で合法な手段でなければなりません。

 債権の回収でも行きすぎると脅迫罪が成立して逮捕されることもあります。

 このように、債権回収はありとあらゆる手段を検討し、その中で適切な手段を取り続けなければならず、大変な作業です。

債権回収は手間と時間とストレスとの闘い

 当時はなぜか、弁護士に回収を依頼するという選択肢が頭にありませんでしたので、独りで黙々と債権回収の方法を考えていました。

 しかし、今から考えると弁護士に依頼することは非常に有効な手段だと思います。

 なぜならば、債権回収は非常に手間と労力がかかりストレスが発生するからです。

 それは、本業を前に進める力を弱める結果となります。

 本来であれば、事業をよくするためにどうすべきか、事業の効率を上げるためにはどうしたらよいか、取引際の新規開発をどうすべきか、といった事業をよくすることに時間と労力を割くべきです。

 しかし、代金未回収への対応に時間と労力がとられるとポジティブに事業を進めることができません。

 これでは単に未回収という意味で事業にマイナスなだけではなく、それ以上に事業にマイナスをもたらします。

 弁護士は債権回収の専門家です。

 常に債権回収のいろいろな関係を抱え、常に回収の手段を考えているのが弁護士です。

 弁護士に相談する。弁護士に依頼する。

 それは費用がかかることですが、回収をまかせ、本来の事業に時間と労力を割くことができるメリットがあります。

 私は今自分が弁護士だから営業トークをするわけではありませんが、一定規模以上で、ある程度請求をしても払い意思を見せない相手の場合には、弁護士にまかせるのが効率的だと思います。

 もし建設業に戻れば、弁護士に依頼することも選択肢の一つに加えると思います。

弁護士の有効活用と事業

 また、弁護士に依頼するメリットは他にもあります。

 回収を依頼することを通じて、どこかに問題がなかったか、今度同様の問題が起きることを予防する方法はあるか、など弁護士から意見をきき、それを今後の契約や営業に生かすことができます。

 私がこれまで担当した代金回収でも、争いがおきうる原因や予防するためのポイントが見つかる場合が少なくありません。

 代金を支払わない場合には、単にお金がない場合だけでなく、さまざまなパターンがあります。

 トラブルになる原因も、いろいろとありますがある程度共通のものもあります。

 弁護士はたくさんのトラブルに対処してきており、ノウハウもあります。

 今後同様のトラブルを回避するためにどのようにすればよいか、弁護士から意見をきき、事業をプラスにするために活用できると思います。

 トラブルは事業遂行上必ず起こることかもしれません。

 しかし、トラブルを通じて、よりよい事業に成長させることもできます。

 その意味で、弁護士を活用することもぜひ検討されることをお勧めします。

 もう一歩進んだ弁護士活用法

 私は建設業時代は弁護士に依頼したり相談することは考えたこともありませんでした。

 しかし、事業に集中するには日常的に弁護士の活用も検討すべきです。

 顧問契約をすれば、大きなトラブルになるもっと前の段階で、トラブルを避けることが容易になります。

 通常は、大きな問題になり切羽つまってはじめて弁護士のもとに行くことが多いと思います。

 しかし、顧問弁護士がいれば、不安や疑問にもったこと、助言がほしいときに、電話一本で気軽に聞くことができます。

 簡易な請求や内容証明などは顧問料の範囲内で対処されることが多いので、どんどんまかせることもできます。

 トラブルが大きくなり、弁護士を探し、電話して予約して、面談して・・・というプロセス不要で動けます。

 継続的な関係を築けますので、事業のことを理解したうえで相談に入ることができます。

 たとえば、当事務所では顧問先への対応は面会だけではく、電話、LINE、その他チャットソフトなどさまざまな手段で対応しており、気軽にお聞きいただける体制で対応させて頂いております。

 大きなトラブルが起きたときにだけ弁護士の出番ではありません。

 日々、事業をサポートするのが弁護士の仕事です。

 ぜひ弁護士の活用もご検討ください。

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