私は弁護士ですが、税務にも積極的に取り組んでいます。

 それには私なりの理由と理念があります。

sun 租税法には「租税法律主義」という基本原理があり、これは租税の賦課・徴収は必ず法律の根拠に基づいて行わなければならないという原則といいます。

 法律は、国民の代表である国会によって作られるものですので、国民が国民自身によって作った法律によってのみ税金を賦課・徴収されるということを意味します。

 近代以前は、封建領主や絶対君主が恣意的に、好き勝手に税金を課していたことが多かったのですが、その後、「代表なければ課税なし」という思想が市民階級の誕生とともに生まれ、国民の同意がなければ課税できないという原理として法治主義の確立に大きな影響を与えました。歴史の教科書に載っている「ボストン茶会事件」(1773年12月16日、現アメリカ合衆国マサチューセッツ州)も有名なエピソードです。

 これらは歴史上の過去の出来事では決してなく、現在でも生じている問題です。

 例えばビール・発泡酒・第3のビールというビール系飲料の開発の流れとそれと対応する酒税法改正の流れをみると、課税要件の変更は、企業の発展を阻害する危険をはらんでいることが分かります。

 企業は経済活動を行う際、将来どのような課税がなされるか、十分な予測可能性がなければおよそ経済活動を行うことはできません。

 仮に国家が財政難に陥ったからといって課税要件が後付けでころころ変わるようでは、企業は研究や投資を行い製品開発することなどリスクが高くて出来なくなってしまします。

 企業の健全な成長・発展のためには、一定の予測可能性ある社会を築くことが必要であり、そのためには、租税法律主義は非常に重要であると考えます。

 私自身も弁護士になる前は事業を行っていました。どのような事業活動をすればどのように課税されるか、ということが不明確では、とても投資や研究開発はできません。

 私は、技術やアイデアある方がそれらを十分に発揮し、持てる力をそれぞれ発揮することが、世の中を良くすることにつながると考えます。そのためには、予測可能性があり、恣意性を排除した課税が必要不可欠であると考えます。

 また、世界から投資の対象となる国となるためには、その前提として、どのような活動をすれば、どのように課税されるのか、という点を明確にして予測可能にする必要がある考えます。

 さらに、今後日本でも、これまで誰もが考えつかなかったような革新的なアイデアや技術が続々と登場することと思いますし、そうあって欲しいと願っています。

 もっとも、新しいアイデアや技術は、旧来の課税実務では想定されておらず、旧来の枠組みでは整理が難しい場合があり、そのため予想外に膨大な税金を課されることもありえます。

 しかし、それではリスクをとって革新的なアイデアや技術でチャレンジする人・企業に萎縮的効果が生じかねません。

 そこで、旧来の実務慣行のみによって形式的に不本意な形で課税されることを防止し、実態と本質に即した適切な課税がなされるよう法解釈を試み主張していくこと、これが弁護士に求められる使命であると考えます。

 そのような意味で、私は租税法律主義が、これからの日本にとってもますます重要になると考え、弁護士活動の重点項目に置いています。