弁護士の北野です。
本日は建設工事の請負代金(工事代金)の回収についてお話します。
私は弁護士になる前は建設業界にいました。
私の会社では主に鳶工事や土木の基礎工事、解体工事などを行っていたため、私もニッカポッカを着て、腰道具をつけて現場で汗を流すこともありました。
そのようなこともあり、当事務所では建設会社・工務店・設計事務所など建設業界の皆様からのご依頼・ご相談が少なくありません。
このように建設業界のご相談が多いのには業界特有の理由があります。
(なお、ここでは主に中小企業を念頭において話をします。)
私自身、建設業界に身を置いていたので、それが常識のようになっているくらいなのですが、
建設業界では以下のようなことが全く珍しくありません。
- そもそも契約書を作成しない。
- 見積書が「〇〇工事一式」で見積りの範囲が不明
- 図面や仕様書もないままに見積だけ求められる。
- 見積を書くか書かないかくらいの段階から工事が始まっていく。
- 現場で変更や追加などどんどんと新しい指示が出る。
こういったことが珍しくないため、トラブルに頻発するのだと思います。
他方、建設工事は代金額が非常に大きいということも特徴的です。
そのためいったんトラブルになると、悲惨な状態になります。
契約書がない、証拠がない、言った言わないの水掛け論・・・・
そのような状態で数千万、数億円の戦いをすることになるのです。
これまで工事代金に関する紛争に関わってきましたが、代金回収についてトラブルが起きたとき・起きそうなときにとるべきと考える対応について以下に述べます。
1.トラブルになったらすぐに専門家に相談する
トラブルになったとき、おかしいなと思ったときは可能な限り早く対応をとってください。
可能であれば弁護士など専門家に相談ください。
上述のようにもともと証拠に乏しいため、すこしでも証拠を保全し、証拠を残していく必要があるからです。
どういう証拠があれば代金を無事に全額回収できるか、ぜひ専門家に尋ねて対策を練ってください。
契約書がなくてもとれる対策はあります。
むしろそこからの一歩が重要になると思います。
話し合いでなんとかなると思うかもしれませんが、時間が経てば証拠が散逸しますし、下手をすれば時効にかかり代金債権が消滅するリスクもあります。
「専門家にすぐに相談する」などありきりなことだと思うかもしれませんが、建設工事の場合、通常の紛争よりも類型的に証拠に乏しいことが常ですので、専門家に相談する必要が特に高いと思います。
弁護士に相談すると相談料をとられると思って躊躇される場合もあると思います。
しかし、例えば建築訴訟を扱う弁護士であれば同様のトラブルを日々たくさん扱っているので回収方法、対処法などノウハウの蓄積があります。そこで得られるアドバイスや情報はトラブル解決に有益となる場合は少なくないのではないでしょうか。
また、代金回収のトラブルなど経営の問題について一人で考えるだけでなく、第三者の意見をきいて一緒に考えることができるというだけで価値があるのではないでしょうか。
2.トラブルの予防について考えて準備する
上述のように建設業界では構造的にトラブルが発生しやすい状態になっています。
そしていったんトラブルが発生すると、解決まで時間がかかりますし、金額も小さくないことから1件トラブルが発生すると経営上の危機につながることもあります。
そのため、どこかの段階で、いかにしてトラブルを防止するのかについて考えるべきです。
契約書もなく、見積書も一式であるなど建設業界の慣行を前提としても予防する方法はたくさんあります。
弁護士の立場からしても、「〇〇すれば紛争を防げます」とアドバイスすることは簡単です。
しかし、建設業界の現実からすると、それらのアドバイスをもらっても意味がないことがあります。
すぐに実行することが難しいからです。
対策を講じるとしても、現実的なものであることが求められます。
当事務所でも、トラブルを契機として
このようなトラブルをどうやったら予防・回避できるかご依頼者様と一緒になって考えています。
以上、抽象的な内容ですが、ぜひ建設業界の皆様にトラブルが生じた際にまず知っておきたいことを書きました。
トラブルが起きてしまうと本来取り組むべき本業に支障が生じます。
本業に全力で取り組むためにもトラブルを予防し、万が一発生した場合も早期解決できることが重要です。
ぜひ参考にしていただけると幸いです。
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